隠し剣 鬼の爪/隠し剣 秋風抄(藤沢周平
初期の短編の中には、本当にこれで話を終えてよいのかといたたまれなくなるくらいに不幸あるいは救いようのない結末を迎えるものがある。隠し剣シリーズは、話の骨格には、秘伝の技を与えられた一人の武士あるいは武家の子女がいる。時には自らの意志によって、時には上司からの命によって、秘伝技を使うことにより、敵と退治する。秘伝とは必殺の技である。必殺とは、かならず敵を斃すこと。かならず人を殺す、ということである。だからハッピーエンドになるはずもないのだろうか。藤沢周平という人には、人を殺しておきながら、明るい結末になるものが書けなかったのかもしれない。折り合いがつくようになってから、穏やかな余韻を残すものが増えてきたのだろうか。
一気に、二冊を読んでしまった。